2017年03月05日
いま私たちに必要なのは……《借り》を伝えていくことである。 (ナタリー・サルトゥー=ラジュ)
ジョニが眼科や形成外科の研修医のころ 研修二年目 あるいわオーベンの方がたいてい昼食はご馳走してくれた
たまに 『きょうはわたしにお昼代払わせてください』
と申し出ると
『ジョニ先生は払わなくていいんだよ 来年 ジョニ先生の下に研修医が付いたときに その人にお昼をおごってあげて』
と言われた
『借りはじかにではなく別の人、次世代に返せばいい 』と言う哲学者ナタリー
その言から ジョニの研修医時代をふと思い出した
(以下引用)
借りは、金銭的もしくは経済的な場面で使われることが多い語だが、それ以上に、恩や負い目という意味も含むもっと広い観念として
人と人を結びつけ、互いに足りないところを補いあう文化を培ってきた。養育をはじめとして、誰もがその存在を他者に、前世代に負う。
借りはじかにではなく別の人、次世代に返せばいいと哲学者は言う。「借りの哲学」(高野優監訳)から。
折々のことば:685 鷲田清一
朝日 2017.3.5 朝刊
2016年11月23日
きょうは一葉忌
きょう11月23日は樋口一葉の命日
そう 五千円札の姫である
本名は樋口奈津
自身の表記では 夏子
東大赤門の向い側の法真寺の隣に一葉は四歳から九歳までの少女時代を過ごした
一葉が生涯を通じて一番 経済的にも精神的にも安定していたころだ
そのささやかな幸せも長続きせず 一葉 17歳のときに父則義が死去
長兄はすでに病死 次兄は素行不良で勘当されていたため 母と妹の生活の面倒 いっさいは彼女の細い両肩にかかることに
一葉はそれからわずか七年の短い生涯に、生活苦から十数回も転居を重ねることになる
一葉は1890年(明治23年)9月から菊坂に住み、1893年(26年)7月に下谷竜泉寺町に移った
ここに住んだのは18歳から21歳の時期で、初恋の相手 著作家でジャーナリスト 半井桃水との交際が生じた頃にあたる
菊坂通りには一葉が通ったという伊勢屋質店の建物が現存する
一葉は竜泉寺町に移ってからも、またここから程近い丸山福山町に転居した後もこの店に足繫く通い、1896年(明治29年)11月23日、本郷丸山福山町で亡くなる
一葉の葬儀には伊勢屋の主人が香典を持って『生前はごひいきにしていただき・・』と弔った
あまた流行作家はいるが 質屋から香典をもらったのは彼女だけだろう
丸山福山町に住んだ1年6月は「奇跡の14か月」と呼ばれ
『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』など、珠玉の作品群を世に送ったが、肺結核により死去
24歳の若さだった
代表作のほとんどがこの場所から生まれた
自身の命を削って灯すように著作に注いだ一葉
後がない 死期が迫っていることを肌に感じながらの創作はさぞやスランプなどありえない、ある意味 集中できる時期だったのではないか
あくまでも仮定の話だが
亡父の決めた婚約者坂本三郎は出世を重ね 判事からドイツ留学後 第二次大隈内閣では秋田県、山梨県知事
を務め 数度 彼女にプロポーズしたことが 彼女の日記から判明している
もし三郎と結婚していたら 裕福で また違った趣の樋口文学の切り口が垣間見られたかもしれない
彼女の文体は長い文章 けり で終わる雅文体、擬古文とよばれるもの
一文が長いのが特徴
文章は読点(、)でずらずら続いていき、ジョニのブログみたいに句点(。)は用いない
現代は 医師が自分の受け持ち患者を結核で死なせたら医療ミスになってしまうが 遠き明治には国民病とも言われ 石川啄木はじめ正岡子規 など錚々たる文学者が落命している
生涯 生活に追われ働きづくめだった彼女の命日が なんと勤労感謝の祝日になろうとは 樋口ならずとも
なんとも皮肉なことだ
2016年03月21日
なぜ東急電鉄は 東京大空襲犠牲者への車内黙祷を呼びかけなかったのか?
あれほど執拗に 3・11の津波犠牲者への黙祷への周知徹底していたのに
大企業で都内を営業区域としているのに東北の被災者にまで気配りなんて 東急って いけてるっしょと快哉をさけびたかっただけではないか
大震災復興に心を寄せる、優しい企業 のイメージが浸透したからか東急電鉄は満足しちゃったのか もう2年前から黙とうの車内放送 しなくなった
おかげで震災で崩壊していた仙台空港の経営権もゲットできたし もう煩わしいのは御免ですか?
さらに 3月といえば 1945年3月9日のアメリカ軍による、人類への戦争犯罪 東京大空襲が起こったことを忘れてはならない
1945.3.9 の東京大空襲での犠牲者は 八万人を越える
当時の警視庁の調査での被害数は以下の通り
死亡:8万3793人
負傷者:4万918人
被災者:100万8005人
アメリカの戦争犯罪への告発となるし
2017年からでも 東急電鉄は アメリカ軍に焼き殺された八万人への鎮魂を検討すべきだ
執拗な車内黙祷 呼びかけ は十八番おはこ でしょ?
命に軽重はないだろう
企業イメージの向上に効果ない雑務は嫌ですか?