2024年09月15日
土屋君のこと
土屋君のこと
小学校3年の夏休み明け
九州は佐賀からの転校生がやってきた
丸坊主で色白 タレ目 まあるい顔 芸人の木村祐一に似ている 白のカッターシャツ 黒の半ズボン
腰のベルトがやけに長くて 犬の尻尾みたいにぷらぷらしている
ふつうは転校生は緊張して 初めて教室に入り 黒板のまえに立つときは 顔はひきつっているものだが 彼はにこにこしていた
クラスの仲間ともすぐに打ちとけ 朝や放課後 彼とみんなでよく遊んだ
母ひとり子ひとり の ひとりっ子で 彼の投げるドッチボールのボールが重くて速かった
プールのお着替えの時 わたしが腰に巻いていたバスタオルを無理やり剥がして ジョニの全裸を教室中に披露された
だが3ヶ月後 突然 彼はまた転校することに
彼の母親がアパートで自死したのだ
この日はちょうど ジョニたちが遠足で駒沢公園などに出かけていた
みんなとの楽しい遠足の帰り アパートに帰ったらいきなり母親が死んでいた
数週間のあと 彼はクラスにお別れの挨拶をしに来た
『土屋君はおじさんに引き取られることになった』
と担任
遠足の日の夜は 土屋君はずっと泣きじゃくっていたらしい
クラスとのお別れの日、彼は無言で にこやかに笑っていた
9歳で いちばん頼りにしていた母親をなくした土屋君の心中はいかばかりだったろう
きょうの朝 デニムパンツを履こうとして ベルトがループから外れて長く垂れ下がっていて 土屋君を思い出した
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