2013年11月30日
眼科医になった幼稚園児
陽が傾き過ぎて影が間延びした11月下旬の午後四時
患者が途切れて医師がいちばん ひまを持て余す時間帯
コンタクトレンズの処方箋をもらいに来た30代前半の かわいい雰囲気の母と 付き添いの年中さんの、男児が診察室へ
さっさと母親の診察は終わったのだが・・・
おチビさんがスリット(細隙顕微鏡 顔を載せ おでこ をつけて 黒目を診察する機器)に興味津々
ジョニが話しかける
「好きな女の子いるの?」
に
「うん」
「あら あなた いまはいない って言ってたじゃない?」
天然二重瞼の、マスクした母親が目を見開いて問いただすが母親の問いかけには反応せず
遠慮がちに、そーっとスリット細隙顕微鏡のスイッチを触ろうとする
「さわってみたい?」
とジョニー
「うん」
大きくうなづく
でジョニ 自分の両手の平に消毒用エタノールをかけ 児童の両手を片方ずつ 両手で包み込むようにして消毒してから・・
「ここ押してごらん」
とボールペンで示す
小さな右の人差し指で、ちょん とIN
と書かれたスイッチを押す
スルスルっとテーブルがスライドして短くなる
「すげぇ」
目を丸くして、驚く
「ぢゃ 今度は ここを押して見て」
わたしがとなりのボタンを右手で示す
「うん」
こくっ とうなずくやいなや
まるでプリンを食べるときのようなキラキラした目で
OUT のボタンを押す
テーブルがまた彼の方にスライドして伸びてきた
こんどは母親の座っている椅子をフットスイッチを踏んで上下させ
母親の身体が持ち上がるのを確認
最後は わたしが彼を抱き上げて膝の上に座らせ顕微鏡をのぞかせる
患者の顔が置かれるあたりにジョニの左手をかざす
スリット光を斜めから照らし
「わたしの手が大きくなって見えている?」彼に訊いてみる
「すげぇ 手のしわまで見える」
すっとんきょうな彼の口調
母親とわたしは大爆笑
彼は好奇心を大いに満たされたようだ
母親との会話になった
「わたしも子供のころ、母が毎週 病院に通っていたので 病院が遊び場でした
特に母の記憶によると、わたしは皮膚科の男性医師に可愛がられていたみたいです
まさか大人になってからも毎日 病院に通うなんて あの当時は夢にも思ってなかったです」
とジョニー
園児の母親も
「ずいぶん 息子の遊び相手になっていただき ありがとうございました
病院でこんな体験は初めてです うちの子も忘れないでしょう」
うれしそうに微笑んで会釈
で どちらともなく
「まるでキッザニアの眼科 みたいだったですね」
とうなづきあった
彼は
(病院が楽しいところ)
って少しは思ってくれたかな?
細隙顕微鏡
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親の顔色うかがいながら 、、、
『機嫌のいい時に、欲しい物おねだりしよう』
とか 『からかわれるから 好きな子は言わない』
とか ちゃんと考えてた か も しれないかなぁ