2014年07月14日
〈診察室の午後〉ラムゼィ・ハント症候群を診察する
なんでだろう いきなり美容外科を受診した20代男性
ハント症候群 と受付の問診票に記入
それを見たジョニー 「あぁ これ ラムゼィ・ハント症候群だ
これは 帯状疱疹ヘルペスによる顔面神経マヒの修正だな」と直感した
眼瞼下垂 の改善か あるいは 口角の下がった口唇縁をひっぱりあげたいのか
と予想
普通は大学病院の形成外科に行くべき患者なのに と思いながら彼を診察室に招き入れる
果たして 患者は右上まぶた が下垂
これを気にしているようだ
2年前に発症のときは、右外耳道のなかにヘルペスが浸潤、かなりの激痛だったみたいだ
教科書的にはラムゼィ・ハント症候群は
帯状ヘルペスによる顔面神経マヒで まぶたの下垂や 口まわりの筋肉の麻痺が生じるもの だが
本来の復元手術としては
神経線維の再縫合、再建がいちばん重要
これにより従来の生理的な神経・筋の運動が正常化し機能的にも後遺症を残さずに治癒できるため いちばん理想的な観血的な治療方法となる
これは もう大がかりな手術なので 大学病院の形成外科などに患者を送るしかない
新鮮例でなくなると 仕方がないので 整容手術になる
この目的の手術を静的再建手術 という
安静時の顔の歪みを改善させることを目的とするので 美容外科でも患者をひきうけることが多い
支配神経である、顔面神経麻痺のために、下垂している顔面を、大腿筋膜や耳介軟骨を利用してトンネルを作って物理的に挙上したり、垂れた皮膚を切除する方法がある
最近では陳旧例でも
動的再建手術 といって機能回復を目的に
麻痺の部位に 正常な筋とその部位の支配神経を同時移植 という治療法もある
ということで この患者には 保険診療が可能なので
大学病院の形成外科をとりあえず受診するようムンテラして帰した