2013年08月28日
〈書評をコメント〉「折口信夫の青春」 折口が同性愛者だったことに衝撃
折口 といえば大多数の識者が想うことは 民俗学の先達 柳田國男の一番弟子 というもの
だが 「折口信夫の青春」(富岡多恵子 安藤礼二 共著)によれば 彼はホモセクシャルであったという
さらに同書では同性愛者であることが彼の人生と著作活動に及ぼした影響を彼の著作を手がかりに掘り下げてゆく
現代とは比較にならないほど、閉鎖的保守的だった明治〜昭和初期
この時代に ホモセクシャル ということを隠さず、要職に就き、旺盛な著作活動をするためには よほど自分に自信があり周囲の彼への評価が高かったのだろう
あるいは 『大鏡』に描写されるほど太古の時代からの、仏門における稚児の存在など、もともと日本の文化には同性愛への寛容の精神に満ち溢れていた というべきなのか
とにかく わたしは 折口信夫が同性愛者だったことに衝撃を受けた
そんなことを言うこと自体が 折口に対して失礼というものだろうが・・
赤坂真理氏の「折口信夫の青春」への書評
『閉塞感や疎外感に苦しむ、すべての人に。私は、折口信夫がこの国に生きていたという事実、それだけで、励まされる』
これは彼女自身が折口の著作で励まされ、心の支えになっていたことの証 といってもよいだろう
赤坂氏の書評に目を通すだけで半分「折口信夫の青春」を読了した気になるから不思議だ
(以下引用)
赤坂真理氏の「折口信夫の青春」への書評
朝日新聞2013.8.25
(書評)『折口信夫の青春』 富岡多惠子・安藤礼二〈著〉
◇対談で描き得た人物像の新地平
折口信夫は、長らく私の気になる人だった。今や私のアイドルと言っていいが、彼自身の著書は、ぐっとくると直観はしても、とっつきにくい。しかし、折口に共振した人が紡ぐ言葉には、読んで心をわしづかみにされるものがあり、私が折口に近づいたのも、本書の対談者、安藤礼二や富岡多惠子の著作を通してだった。
折口信夫には、謎が多い。柳田國男の弟子というのが広く知られた顔だ。しかし、柳田に出逢(であ)う前に、折口の世界はすでに豊穣(ほうじょう)だったのであり、言語学、宗教学、のみならず短歌、小説など、これだけ多くの領域で一流の著作をなした人は、そうはいない。本書では、主に柳田以前、折口という「人」が形成される幼年期から青春期を、著作等を手がかりに追っている。
折口は同性愛者だった。その点も、二人は追う。暴露趣味ではなく、ごく自然に、人と人が出会い惹(ひ)かれ合い別れた記録として。すべての人間関係は恋愛に似る。そしておよそ「個」などというきらめきは、他者との圧倒的なかかわりの中からしか出てこない。
私が、他の折口論にいまひとつ興味を持てなかったのは、ほとんどの論者が、折口のセクシュアリティを、あたかもないかのように扱い、結果、どこかが薄かったからだ。富岡や安藤は、それほどに大きなファクターが、人生と表現に影響を与えないほうがおかしいと考える。折口は、同性愛者であることを隠さず、要職に就き、愛する者たちと共同生活を営み、磁力を放つ著作をなし続けた。家父長制の強かった時代において、想像を絶する勇気である。無視するほうが失礼ではないか。
驚くべきことに、この種の人材は、今日の日本社会においてさえほとんどお目にかかれない。異性装タレントには驚くほど寛容な一方、喧伝(けんでん)される幸せのかたちは、「男女が結婚して子供をつくり育てる家庭」ばかりであり、それ以外の物語はほとんど話題にもされない。それは多数派だろうが、そのかたちばかりが強調されて多様性がなく息苦しさを覚えることも、少子化の大きな原因ではないだろうか?
読めば読むほど引き込まれる本である。謎がさらに大きな謎を呼ぶミステリーのようであるし、明治から昭和という激動の時代と一人の人間のドキュメンタリーとしても、人間の孤独や愛を普遍的に描いた文学作品としても読める。資質も性別も世代もちがう二人の論者が、補完しあうようにピースをはめ、そうでなければ完成しない像があったと思わされる。
閉塞(へいそく)感や疎外感に苦しむ、すべての人に。私は、折口信夫がこの国に生きていたという事実、それだけで、励まされる。
2013年08月27日
日本企業「脱中国」くっきり、ミャンマーへ ベトナムヘ 草木もなびく
上期ASEAN投資、対中国の2倍超
日本貿易振興機構(ジェトロ)が2013年8月8日発表した「世界貿易投資報告」によると、
2013年上期(1〜6月)の日本企業の対外直接投資額は、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが前年同期比55.4%増の102億ドル(約9800億円)で過去最高を記録、対中国向けの2倍超に膨らんだ
生産拠点の「脱中国」が鮮明に
昨秋以降の日中関係の悪化や人件費の高騰を背景に、中国向け直接投資は31.1%減の49億ドルまで落ち込んだ
ジェトロの現地調査では、ASEANのうち、上期の日本による対外直接投資が1位だったインドネシアは、自動車メーカーの新工場建設や拡張ラッシュに伴い、部品や素材メーカーの進出が加速
上期投資額で2位のベトナムは、現地の日系事務機器メーカーの生産台数が中国を上回った
財務省の国際収支統計によると、2011年の日本の対ASEN直接投資額は約1兆5490億円と前年比でほぼ倍となり、中国向け(約1兆円)を上回った。タイ、シンガポールなど、ASEAN主要国向けの投資が過去最高を更新
輸出でも中国の存在感なし
日本の2月の中国向け輸出で顕著となっており、前年同月比16.0%減の8414億円。一方、ASEAN向けは8428億円で、7年半ぶりに中国を抜いた
高額な中国の人件費ミャンマーの6倍
中国の安価な労働力だが、製造業の1人当たり賃金はこの5年ほどで倍近くに跳ね上がり、かつて「世界の工場」ともてはやされた進出メリットは薄れている
日本貿易振興機構(ジェトロ)の2012年調査ではミャンマーでの賃金(製造業)は月平均1人当たり約92ドル(約7300円)で、中国の6分の1
すでにクボタ、兼松などが進出しており、国際物流の阪急阪神エクスプレス(大阪市)はアパレルや工業製品の輸送需要を見込み、7月に現地法人を設立するようだ
糖尿病とアルツハイマー病についての 一考察
日本では早くから糖尿病と認知症の相関関係が注目されていた
九州大学と福岡県久山町が共同で取り組む、疫学調査 有名な久山町研究
これによれば OGTT いわゆる ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖75mg を服用したあとの30分〜1時間毎の血糖値を測定する検査)
これで糖尿病と判定された人を2003年まで15年間追跡調査したところ 糖尿病があるとアルツハイマー病になるリスクは健常な人の2倍であった
同様、血管性認知症では2.5倍もリスクは高かった
糖尿病の内科専門医の間では
『動脈硬化が基盤にある血管性認知症が糖尿病で多いのは合点がいくが
糖尿病とアルツハイマー病を関連つける詳しい仕組みは不明』
が定説
あまりに専門すぎて医学的常識を忘れていないか
大切な常識
糖尿病では 創傷治癒の遅延 と 感染への抵抗力低下 が起きることだ
簡単にいえば
糖尿病の人の怪我や 手術のあとの回復がきわめて遅いこと
細菌やウイルスに対して 感染しやすい つまり カゼなどひきやすい
ということ
これらは血管内皮への特異的傷害を及ぼす、糖尿病の本質からきているのではないか
最近では 『うつ病と 糖尿病との関連』をいう精神科医が現れているが それも これで説明がある程度つく
アルツハイマー病の大脳のスライスを調べ 「老人斑」の増加とインスリンの効果の低下 が関係していた
などとしているが
これは 結果論でしかない
要するに ポイントは
身体を正常に戻そうとする、創傷治癒力が 糖尿病では衰えていることが アルツハイマー病を含めた、病気になりやすさ の原因なんだろう